棺に収めて2009/02/23 19:50

レンタルの酸素吸入器の返却の連絡をしようと部屋に入った。
吸入器の上に貼ってある連絡先を記したシールの電話番号を見るために。
そのことだけしか頭になく、ふっとドアをあけた。

布をかけた棺がベッドの上に‥‥
予想していない光景だった。
ドライアイスを抱かされて異様に盛り上がってはいるものの、今朝までと同じようにベッドの上に横たわり、布団がかけられた母がいるような気がしていた。

暖かく息をしている母ではなく、冷やされて組んだ手や耳が凍っている母が寝ていることにさえまだ慣れていないのに。
慣れる前に、儀式はまた一つ進んだ。

病のためにむくみ膨れた手。
今朝は押すと、シャリシャリと音がするのではないかというような感覚だった。
棺に新しいドライアイスと共に入って、もし棺をあけて今また触れるなら、今朝よりももっと冷たくなって固く凍っているのだろうと思う。

朝近くに寝る時にシャリシャリとした手に触れ、固く凍り付いた耳に触れ、耳についた霜を手で溶かした時に、なにか一つ、心の中が納得した気がした。
けれど、納得してはいなかったみたいだ。

もう二晩家にいて、そして通夜を過ごす寺に移る。
昨夜は布団に寝る最後の夜だから‥‥そう思って横の床に毛布を延べて寝た。
あと二晩、寝る時は横に行こうかね‥‥

でもね、スカイプを繋ぐ気にはなれないんだ。
見えるのは棺だけなんだもん‥‥

同居ということもあるかもしれないけれど、二人目の親を亡くすというのが、こんなに寂しいこととは知らなかったよ。

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